月夜の黒猫は、心を攫う


「稀月くん、私、千穂ちゃんに返事していい?」

 千穂ちゃんから届いたメッセージを見せながら訊ねると、稀月くんは少し考えるように眉根を寄せた。

 稀月くんは、私が前の学校の友達である千穂ちゃんと繋がることで、椎堂家やRed Witchに情報が洩れることを心配しているんだと思う。

 でも……。

「千穂ちゃんは、魔女でも使い魔でもないんでしょう?」

 前の学校で、千穂ちゃんと仲良くすることを稀月くんから反対されたことはない。

 それはおそらく、千穂ちゃんが魔女でも使い魔でもないふつうの人間で、私に危害を加えることはないと稀月くんが判断していたからだ。

 懇願するようにじっと見つめると、稀月くんが額を押さえて「はあーっ」と深いため息をつく。

「わかりました。返事をしてもいいですよ」

「ほんとう?」

 きらっと目を輝かせると、稀月くんがまたため息をついた。

「だけど、このことは伝えておいてください。瑠璃が今、訳あって椎堂家を出ていること、椎堂家に関わる人間から何か聞かれても瑠璃の情報は絶対に漏らさないでほしいこと」

「うん」

「どうしてか理由を聞かれても、『今は何も言えない』と黙秘をつらぬいて」

「わかった。ありがとう、稀月くん」

 ふわっと笑いかけると、稀月くんが私の頭に手を伸ばしてきた。

 そのままグイッと引き寄せられて、稀月くんの肩におでこがくっつく。