月夜の黒猫は、心を攫う


「ちょっと待ってください。どういうことですか……?」

「稀月くんには言い忘れてたけど、実は沙耶ちゃんと千穂ちゃんは従兄妹同士なんだって……」

「その話、連絡先交換をしたいって言われたときには聞かされてないけど……」

「ご、ごめんなさい。わざと言わなかったわけじゃないんだけど、あのとき、沙耶ちゃん、早く部活に行かなきゃいけなくて急いでたし……」

 私も、沙耶ちゃん経由で千穂ちゃんと繋がる可能性があるってことを少しも考えていなかった。

 私がはじめに、沙耶ちゃんは千穂ちゃんの従姉妹だってことを伝えていたら、稀月くんは連絡先交換を許してくれなかったのかもしれないな。

 しゅん、として下を向くと、稀月くんがため息を吐く。

「まあ、今さら言っても仕方ないですね。それで、香坂千穂から届いたメッセージの内容は?」

「あ、うん。今から見てみる」

 稀月くんに促されて、千穂ちゃんから届いたメッセージを開く。

《るりー! ちほです》 

《急に転校して連絡取れなくなって心配してたよ》

《沙耶から瑠璃が元気そうってきいて安心した》

《イケメンボディーガードくんもいっしょだってね》

《なにかあったらいつでも連絡して》

 戸黒さんに襲われた夜、私は誰にも何も言わずに椎堂家から姿を消した。

 だから、千穂ちゃんと茉里に「さよなら」が言えなかったことが心残りだったけど……。

 私を心配してくれる千穂ちゃんからのメッセージに、ちょっと泣きそうになる。