月夜の黒猫は、心を攫う


 ゆーくんを襲った犯人は捕まっていないけれど、ゆーくんの命を奪ったのは狼の属性を持つ使い魔の集団。そのことだけはわかっていて、稀月くんは、ゆーくんを襲った犯人を捕まえるためにNWIに協力をしているそうだ。

 それと同時に、稀月くんが心配したのが、椎堂家に引き取られた私のこと。

 ゆーくんを殺した使い魔を追いながら、稀月くんは私の行方も探してくれていたらしい。

 私の身になにか起きる前に。

「佑月のことがあってから、大上以外の狼の使い魔に会うと、嫌悪感がすごい。もしかしたら、こいつが佑月を殺した犯人かもしれないって心のどこかで思ってしまうんです」

 稀月くんが苦しそうな声で話すのを聞いて、私も胸が苦しくなった。

「そうだったんだね……」

「今日、瑠璃が連れ去られそうになったときも、心臓が止まるかと思った。おれのせいだ。この街なら安全だろうっておれが気を抜いたから。魔女にとって絶対安全なんて場所はどこにもないのに」

「稀月くんだけのせいじゃないよ。私も、ちょっと油断してたし」

「いえ、瑠璃を危険な目に遭わせたのは100%おれの責任です。もう二度と、放課後に出歩くのはやめましょう」

 そう言って、稀月くんがぎゅーっと私を抱きしめた。

「でも……、楽しかったよ。稀月くんの放課後デート。私、今まで、学校帰りに自由に出かけたことなんて一度もなかったから。できることなら、もっといろんなことを知りたいって思う。稀月くんといっしょに」

 私がそう言うと、稀月くんが無言になった。

「……、次に出かけるときは、NWIに頼んでしっかりSPを配置してもらってからにしましょう」

 私を抱きしめたまましばらく考えたあと、稀月くんがそんな提案をしてくる。

 SPを配置……。心配してくれているのはわかるけど、それはそれで、なんかやりにくそうだな。