「ねえ、稀月くん……。狼の使い魔と何があったの?」
聞いて答えてもらえるとは思わなかったけど、私はダメ元で聞いてみた。
稀月くんが今不安定になっているのは、私を襲ったのが狼の使い魔だったってことにかかわりがあるんだと思う。
私の質問に、稀月くんはやっぱり何も答えなかった。けれどしばらくして、苦しそうな声が耳に届く。
「五年前……。十六歳になってすぐの満月の夜、佑月の心臓がRed Witchの狼のグループに奪われたんです」
「え……? 佑月って、ゆーくん?」
ゆーくんは、施設にいるときに、稀月くんといっしょに私に優しくしてくれていた男の子で、稀月くんのお兄さん。
顔はほとんど思い出せないけど……、年がいくつか上で、おやつを分けてくれたり、絵本を読んでくれたり、私にとってもお兄ちゃんみたいな存在だった。
そのゆーくんが、五年前に心臓を奪われたってことは……。
「ゆーくんも、《特別な心臓》を持つ魔女だった……?」
「そうだよ。瑠璃が椎堂家に引き取られたあとも、佑月がいれば大丈夫だって思ってたのに……。五年前に、Red Witchが童話に見立てて心臓を奪う事件が頻発して、佑月も狙われた。あのとき、おれがもっとおとなだったら……。魔女と使い魔のこと、NWIの存在を知ってたら、佑月は死ななかったかもしれない……」
稀月くんが、ギリッと悔しそうに唇を噛む。



