月夜の黒猫は、心を攫う


 たぶん、私の両親は困っている子どもへの援助を惜しまないタイプのおとななのだ。

 とはいえ、ただの女子高生でしかない私が、ボディーガードに守られるような危険な状況に巻き込まれることなんて、まずありえない。

 それでも、稀月くんは父との契約通りに私のそばを離れない。

 私のボディーガードになってすぐの頃、稀月くんは学校でもずっと私のそばにいた。ずっとっていうのは、ほんとうに言葉通りの意味で。

 稀月くんと私はクラスも違うのに、私が授業を受けているあいだずっと、廊下に立って私のことを見守っていたのだ。

 クラスメートたちは無表情のまま一日中廊下に立っている稀月くんに興味津々だし、私はずっと見られっぱなしで落ち着かないし。マジメすぎる稀月くんの仕事ぶりにひどく困った。

「学校ではちゃんと自分のクラスで授業を受けて」と話したけど、稀月くんはなかなか聞き入れてくれなくて。

 挙句の果てには、「俺は高校は卒業できなくても大丈夫なので」なんていう始末。

 せっかく父から教育費の援助を受けているのに、ずっと私のそばにいたら稀月くんの学ぶ時間が奪われてしまう。

 マジメに仕事をしようとすると稀月くんと、授業を受けてもらいたい私。

 その妥協案が、私が学校でキーホルダー型のGPSを持つこと。位置情報だけがわかる、子ども用の簡易なものだ。

 ふつうに学校で生活していて危険な状況に巻き込まれることなんてまずないはずなんだけど……。

 私が子ども用のGPSを必ず持つことで稀月くんが安心して授業が受けられるなら仕方がない。