月夜の黒猫は、心を攫う


 何度も繰り返されるキスに息があがって、だんだんと立っているのもつらくなる。

 稀月くんのキスを受け止めながら、ほとんどしがみつくみたいに抱きつくと、ようやく彼が唇を離してくれた。

「……、すみません」

 私の肩に頭を預けるように凭れてきた稀月くんが、震える声で謝ってくる。

「なんで? 私、稀月くんにキスされるの嫌じゃないよ」

 それよりも、稀月くんがめずらしく不安定になっているみたいですごく心配。

 首筋にあたる、稀月くんの綺麗な黒髪。それをそっと撫でると、稀月くんがびくりと肩を震わせた。

「あ、ごめん……」

「ううん。もうちょっとだけ撫でて」

 手を退けようとしたら、稀月くんにちょっと甘えた声でお願いされて、胸がきゅんとなる。

 そのまま、よしよしと撫でてあげたら、稀月くんは私の肩に頭を預けたままじっとおとなしくしていた。

 警戒心の強い野良猫でも手名付けたみたい。

 私の目線の先には、稀月くんの細い首の後ろが無防備にさらされている。

 色の白い首筋。その中央には、いつかも見せられた小さな三日月型の痣があって。私はそこを、指先でそっと撫でた。

 私の首の後ろにも、稀月くんのと同じ三日月型の痣があるらしい。私と稀月くんは、同日同時刻に生まれた魔女と使い魔。

 ふつうの人よりも感覚が優れているという稀月くんは、いつだって強いけど、ほんとうは私と変わらない十六歳の高校生。

 稀月くんはいつだって私を守ってくれるけど、私も、稀月くんが不安なときは守ってあげたい。

 首の後ろのおそろいの徴に触れて、心の底からそう思う。