月夜の黒猫は、心を攫う


「とりあえず、瑠璃は部屋で少し休ませます。行こう」

「わかった。何かあればすぐに声をかけてね」

 蓮花さんはそう言って気遣ってくれたけど、今の稀月くんはあまり蓮花さんたちとは話したくないらしい。私の手を引くと、二階へと上がっていく。

 隣同士に並ぶ私たちの部屋の前に来ると、稀月くんは何も言わずに、私のことを自分の部屋へと引っ張り込んだ。

 ドアが閉まると同時に、稀月くんに掻き抱かれて、スクールバッグが手から落ちる。

 いつになく余裕なさそうに抱きしめてくる稀月くんの力は強くて、彼の腕のなかで固まった私は、息をするのも忘れそうだった。

「ごめん……。しばらくこうしてて」

 耳元で稀月の掠れた声がして、無言でコクコクとうなずく。

「……、よりによって、狼なんかに隙を突かれるなんて……」

 稀月くんがうめくようにつぶやいて、私の髪を少し乱暴に撫でる。

 それから私の頬を両手で包んで上を向かせた稀月くんが、余裕なく唇を重ねてきた。

「……んっ」

 稀月くんとのキスはこれが二回目。一度目の優しくて甘いキスと違って、ちょっとだけ息苦しい。

 角度をかえては、何度も唇をふさがれて、稀月くんの背中に回した手で、制服のブレザーをぎゅっと握る。