月夜の黒猫は、心を攫う


 宝生家に着くと、蓮花さんと大上さんが出迎えてくれた。

「瑠璃さん、夜咲くん、ふたりともケガはない? 私の香水が効かない使い魔だったみたいでごめんなさい……」

 私の顔を見るなり、蓮花さんが頭をさげて謝ってくる。

「いえ、蓮花さんのせいじゃないです。放課後に寄り道してしまった私たちにも責任はあるので……」

「いいえ、瑠璃さんが襲われたのは私の責任。私の香水の効果を信用して、ふたりは放課後出かけたんでしょう。ほんとうにごめんなさい」

 蓮花さんは、使い魔除けの香水をかけていたのに私がRed Witchと関係があるかもしれない使い魔に襲われたことをとても気にしているみたいで。何度も謝られた。

「蓮花さんのせいじゃなくて、おれが気を抜いたせいです。それに、狼の使い魔の中には、特別に鼻がいいやつもいるから」

 稀月くんはそう言うと、チラリと大上さんのほうを見た。

 稀月くんの冷たいまなざしに、大上さんが少し悲しそうに目を伏せる。

「ごめん。また、稀月くんの中で狼の使い魔の印象が悪くなっちゃったね……」

「べつに、イヌガミの印象は悪くなってない」

「それならいいけど……」

 稀月くんにそう答える大上さんは、「イヌガミ」と呼ばれてもいつものようには反論せずにシュンとしていた。

 今日、私を襲ってきたのは狼の属性を持つ使い魔。そういえば、今朝、烏丸さんが、稀月くんは「オオカミ」が嫌いなのだと言っていた。

 稀月くんは、狼の使い魔と過去になにかあったのかもしれない。

 車に乗ってから、何も言わずに私の手を握りしめていた稀月くんのことが少し心配になる。