月夜の黒猫は、心を攫う




「お嬢様、これを」

 学校に着いて車から降りると、稀月くんにキーホルダー型のGPSを手渡された。

 いつものことなので、私も抵抗することなくそれを制服のポケットに入れる。そうしないと、稀月くんは学校で私のそばから離れてくれないからだ。

 私が通っているのは、企業の役員の子どもや芸能人の子どもなど、裕福な家庭の子どもが多い私立高校。

 半年前に、その私立校に入学することが決まったとき、両親が私にボディーガードをつけると言い出した。

 父は不動産関連の会社を経営する大きな企業の社長だけど、私自身は特別な取り柄もないただの女子高校生。

 父にボディーガードがつくならまだしも、私にボディーガードがつくなんて。わけがわからない。

「必要ない」って断ったら、両親は「学校が遠いから、瑠璃になにかあったら心配だ」と絶対に譲らなかった。

 そうして、うちにやってきたのが私と同い年の稀月くん。

 ただの女子校生にボディーガードをつけた両親にも驚いたけど、そのボディガードが年の近いかっこいい男の子だってことにもまたビックリした。

 だけど、高校一年生の稀月くんがボディーガードすることになったのには、いろいろ事情があるらしい。

 何年か前に事故で家族を亡くした稀月くんには身寄りがない。

 父と稀月くんがもともとどういう知り合いだったのかはわからないけれど、稀月くんはうちに住み込みで私のボディーガードをする代わりに、父から教育費や生活面での援助を受けているそうだ。

 稀月くんがうちに来たばかりの頃、家に来てくれるお手伝いさんがそんなふうに話しているのを聞いた。