午後の授業が終わると、約束通り、稀月くんが速攻で私のことを迎えにきた。

「稀月くん、沙耶ちゃんに連絡先を教えてもいいかな」

 早く帰りたそうな稀月くんに確認をとると、稀月くんは沙耶ちゃんのことをじっと見たあと、連絡先交換を許してくれた。

「よかった。瑠璃の彼氏に認めてもらえて。じゃあ、あたし、部活があるから。また明日ね」

 稀月くんの前で連絡先を交換すると、沙耶ちゃんは私に手を振って走っていく。

 沙耶ちゃんは、バレー部に入っているらしい。

「部活って楽しそうだよね」

 沙耶ちゃんの背中を見送りながらぼそっとつぶやくと、稀月くんが無表情で私を見つめてきた。

「バレー部に入りたいんですか?」

「そういうわけではないけど……」

「瑠璃にはあまり向いてないかも。運動苦手ですよね」

 稀月くんにはっきり言われて、ちょっと苦笑い。

「そうだね。バレーは私も無理だと思う。ただ、放課後って今までどう過ごしてたのかなあって思っちゃって……」

 前の学校に通っていたときは、授業が終わるとすぐに家の車が迎えに来た。

 ヴァイオリンのレッスンや塾。茉莉のお見舞い。

 椎堂家のお嬢様として生活していたときは、やるべきことが多くて。決められたスケジュールをこなしているうちに、いつのまにか夕食の時間になり……。お風呂に入って、眠る。

 そういう決まったルーティンで生活をしていた。