「実は、あたしのお父さんと香坂千穂のお父さんが兄弟なんだ。千穂はあたしの従姉妹なの。まあ、向こうは小さなときからテレビ出てるし、家族全員芸能人だし、平凡なうちの家族とは全然違うんだけど」
「そうだったんだ……! すごい!」
転校先で初めて話した子が、前の学校の友達と従姉妹なんて。すごい偶然だ。
「よく言われるけど、あたしがすごいわけじゃないから。小さい頃は、おばあちゃんちでよくいっしょに遊んでたけど、最近は年に一回会うか会わないかだし……。写真撮ってきてとか、連絡先聞いてとかそういうのはできないよ」
ひとりで興奮していると、香坂さんが苦笑いする。
わざわざそんなふうにクギを刺すってことは、芸能人の親戚ってことで大変だったこともあるのかもしれない。
「もちろん、そんなつもりはないよ。実は私、前の学校で千穂ちゃんと友達だったんだ」
「え、ウソ。千穂の通ってる学校って、お金持ちのお嬢様が多い私立だって聞いてるよ。学校まで送り迎えしてもらってたり、ボディーガードつけてるような子もいるって。宝生さんて、……」
驚いた顔で見てくる香坂さんに、私は慌てて首を横に振る。
「あ、うん……。私は別にお嬢様とかではなかったんだけど、親戚……のツテでその学校に通ってて……。でも、その親戚とはもう繋がりがなくなっちゃったから、この学校に転校してきたんだ」
話せる範囲で説明したら、香坂さんが「そうだったんだね〜」と、うなずく。
「東京の名門私立に比べたら、うちの学校は設備も劣るだろうし、慣れないことも多いと思うけど、困ったことがあったらいつでも言ってね」
優しく笑いかけてくる香坂さんは、やっぱり千穂ちゃんと雰囲気が似てて、ほっとする。
香坂さんが、この学校で初めての友達になってくれたらな。