「稀月くん……?」
「放課後、迎えにきますね」
「うん」
うなずくと、稀月くんが私の耳元に顔を近付けてきた。
「できれば、離れたくないんだけど」
私にだけ聞こえるように囁かれた声に、胸がきゅっとなる。
ボディーガードをしていてくれたときの稀月くんは、私と離れるときこんなふうじゃなかった。
義務で私のそばにいてくれる。そんなふうにしか思えなかった。
だけど今の稀月くんは、心から私と離れたくないって言ってくれてるんだ、って。声や表情から感じとれる。
なんか、はずかしいな……。でも、嬉しい。
赤くなってうつむくと、稀月くんが名残惜しそうに私の手を離す。
「あとでね、瑠璃」
ああ、このタイミングで。こんなふうに名前で呼ばれるのはちょっと……。かなりやばいな。
心臓、ドキドキする……。
視線をあげて頷くと、稀月くんが目を細めてふっと笑う。その表情が、さらに私をドキドキさせる。
「あとで、ね」
小さく手を振って、稀月とそれぞれ別々の教室に入ると、香坂さんが横から私の顔を覗き込んできた。



