月夜の黒猫は、心を攫う




 職員室に転入の挨拶に行くと、一年生の学年主任の先生が出てきてくれた。

「おはよう。ふたりとも待ってたよ。教室に案内するから、少し待っていてもらってもいいかな」

 先生に言われて職員室で待っていると、しばらくして、私たちが入るクラスの委員長がふたりやって来た。

「宝生くんは一年一組の仲元くんが、宝生さんのことは一年二組の香坂さんが教室まで案内するよ。わからないことは、なんでもふたりに聞いて貰えばいいから」

 学年主任の先生が、職員室に来たふたりの生徒を私たちに紹介してくれる。それを聞いた稀月くんが「え?」と顔を引きつらせる。

「瑠璃とおれ、違うクラスなんですか?」

「ああ、親戚とか双子の兄弟は基本的に同じクラスにはならないんだ。じゃあ、仲元くんと香坂さん、あとはよろしく」

 学年主任の先生はそう言うと、私と稀月くんを託して自分の席へと戻っていく。

「一組の仲元(なかもと)です。ふたりとも、よろしく」

 一組の委員長の仲元くんが、私たちに笑いかけてくる。メガネをかけた優しそうな雰囲気の男子だ。

 その隣で、

「二組の香坂(こうさか)です。よろしくね」

 と、二組の委員長の香坂さんが笑いかけてきた。その笑顔が誰かに似ている気がする。

 少し考えて、千穂ちゃんに似てるんだって思った。

 そういえば、香坂って名字も同じ。めずらしいな。

「よろしくお願いします」

「じゃあ、みんなで教室に行こうか」

 お互いにあいさつが終わると、仲元くんが先頭に立って教室まで案内してくれた。

 一年生の教室は、校舎の三階。

「宝生さんはこっちだよ」

 香坂さんについて二組の教室に入ろうとすると、くいっと後ろに手を引っ張られた。

 振り向くと、稀月くんが私の手をつかんで何か言いたそうな、不服そうな目をしてる。