玄関を出て広い駐車場に行くと、この前とは違う白のミニバンが止まっていた。
「これがお嬢様の送迎車?」
三列シートの真ん中の席に私と並んで座った稀月くんが、眉を寄せてちょっと微妙そうな顔をする。
椎堂家の送迎に使われていたのは黒の高級車だったから、それと比べたらこの車は家族でのお出かけ用って感じだ。
「そうだ。新しく通う学校は、私立だけど一般の生徒が通う学校。前みたいに、黒の高級車を学校の門につけてたら目立ちすぎる。これからは、この車で学校の裏まで送る。そこからは、ふたりで歩いて学校に入れ。それが、宝生さんの指示」
「ふーん」
まだちょっと不満そうな稀月くんだったけど、これが蓮花さんのお父さんの指示だとわかると、それ以上は何も言わない。
烏丸さんの話を聞いて、私は普通の生徒として新しい学校に通えるのが嬉しかった。
今まではどうしても、『椎堂家のお嬢様』という肩書がずっと私につきまとってきて。養女として椎堂家に入った私は、ニセモノのお嬢様なのに、その肩書で周囲をだましているような気がして心ぐるしかったから。
学校の裏の道につくと、先に車から降りた稀月くんが、私に手を差し出してきた。
「お嬢様、足元に気をつけて」
椎堂家でボディーガードをしてくれているときも、稀月くんはいつも車の乗り降りをする私をこうやって気遣ってくれた。
差し出された手の上にそっと手をのせるその一瞬は、ものすごくドキドキして。たとえ、ニセモノでも『椎堂家のお嬢様』で良かったと思えた。
お嬢様じゃなくなった今も、私を特別扱いしてくれる稀月くんにドキドキする。
だけど……。



