「綺麗ですね」
どこの香水かな。瓶をクルリと回してみるけれど、ブランド名は書いていない。
どうして私にこんなもの……。
もしかして、私……、くさいとか……?
心配になって、制服の上から腕のにおいをすんっと嗅ぐと、蓮花さんがふふっと笑う。
「それは、私が作った使い魔除けの香水」
「使い魔除け?」
「そう。使い魔が、視覚や聴覚といったそれぞれの持つ感覚で魔女を見分けることは夜咲くんたちから聞いていると思うんだけど……。その香水をつけておけば、半日は使い魔に気付かれにくくなる。瑠璃さんの送り迎えは烏丸が担当するし、夜咲くんがそばについているから心配はないと思うけど、念のために毎朝学校にはつけていって。それをつけていれば、もし万が一、外でRed Witchに関わる使い魔に出会うことがあっても、一時的に彼らの感覚を鈍らせることができる」
「そうなんですね」
さっそく香水を振りかけてみると、ふわっと一瞬、花のような爽やかで甘い香りがする。けれどすぐに、その匂いは消えてしまった。
腕や髪をにおってみるけど、自分からは香水を振りかけた瞬間のような甘い香りはしてこない。
「これで大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
「あ、でも……。この香水、使い魔除けなんですよね? 稀月くんになにか影響は……」
ふと心配になって訊ねると蓮花さんが微笑む。