宝生家に来た翌週。私と稀月くんは、新しい高校に通うことになった。

 編入手続きは蓮花さんが済ませてくれていて、制服まで用意されていた。

 新しい学校の制服は、紺ブレザーにグレーのスカート。ひとつにまとめた髪には、茉莉からの誕生日プレゼントのヘアゴムをつけた。

「新しい制服も似合いますね」

 そんなふうに褒めてくれる稀月くんだって、新しい学校の制服姿が新鮮でかっこいい。

 朝ごはんを食べたあと、稀月くんとふたりでリビングで見つめ合っていると、蓮花さんが烏丸さんを連れてくる。

 新しい高校は、蓮花さんの家から車で十分。

 私と稀月くんの学校までの送迎は、烏丸さんが担当してくれることになったのだ。

 私たち宝生家に連れてきたあと、烏丸さんはしばらくの間、蓮花さんのお父さんのところに行っていた。

 そこで、戸黒さんの行方を捜査していたらしいのだが……。

 戸黒さんは長年働いていた椎堂家からも姿を消しているようで、あの夜以来、行方がわからないらしい。

 烏丸さんが蓮花さんのお父さんの父を離れて私たちのところに戻ってきたのは、戸黒さんがまだ私の心臓を狙っている可能性があるからだ。

 烏丸さんは、しばらく蓮花さんの暮らす宝生家の別宅内在して、戸黒さんの行方を追うらしい。

「新しい学校に通うにあたって、瑠璃さんたちにいくつか伝えておくわね。まず、ふたりの名前。本名のままだと戸黒に見つかる可能性があるから、新しい学校では宝生 瑠璃と宝生 稀月っていう名前で手続きしてる。ふたりは、同じ家に住んでいる親戚同士ってことにしてあるから、クラスメートに何か聞かれたらうまく誤魔化して」

「……、はい」

「あとは……、瑠璃さんに新しいスマホ。こっちの学校で知り合った人に連絡先を教えてもいいかどうかは、稀月くんと相談して決めてね。新しい学校は、今のところ魔女も使い魔も存在していない安全なところを選んでるけど、人付き合いは慎重に。どこからRed Witchに情報が漏れるかわからないから」

「わかりました」

「それから最後に、これ……」

 蓮花さんが、瑠璃色のクリスタルの蓋がついた綺麗な香水の瓶を手渡してくる。