月夜の黒猫は、心を攫う


「それは、私が稀月くんの運命の魔女だから?」

「それはもちろんありますけど……。おれは昔から、あなたのことが好きなので」

「稀月くんが、私を……?」

「そうですよ。だから、駐車場での告白は嬉しかったし、お嬢様の気持ちがおれと同じだったらすごく嬉しいです」

 稀月くんがそう言って、つないだ私の手を親指ですりっとなでる。

 駐車場での告白……。

 もう死ぬかと思った瞬間に、稀月くんに向かってつぶやいた「だいすき」って言葉。あれはもちろん、恋とか愛とか、そういう意味での「好き」だ。

「わ、たしも……、稀月くんが好き」

 小さな声で打ち明けると、稀月くんがふっと目を細めた。

 どんなに小さなささやき声でも、私の言葉は稀月くんの耳に届くらしい。それが、少しはずかしい。

「これからはずっと、おれがお嬢様のそばにいます」

 稀月くんがそう言って、空いている方の手で私の髪に触れる。

 大きな手のひらで愛おしそうに撫でられて、胸がきゅっとする。

 これからは、契約でも義務でもなくて、稀月くんが彼の意志でそばにいてくれるんだ。