月夜の黒猫は、心を攫う


「部屋に案内されたとき、蓮花さんとは何か話しましたか?」

「うん。部屋に用意してあるもののことをいろいろ説明してもらったよ」

「今後のことや、お嬢様の学校のことは?」

「それは、全然……」

 そうだ。あたりまえだけど、椎堂の家を出た以上、もう今までいた学校には通えない。

 そんなに友達がいたわけではないけど、千穂ちゃんにももう会えないんだな。

 千穂ちゃんのこと、大好きだったから少し寂しい。

 私が彼女の笑顔を思い出して黙り込むと、

「新しい学校も楽しいですよ」

 と稀月くんが慰めてくれる。

「新しい学校に通えるの?」

「来週から通えるように、蓮花さんが手続きをとってくれています。宝生家の旦那様のお知り合いが務める学校なので、お嬢様には安心して通っていただけるかと」

「そうだったのね。明日、蓮花さんにはお礼を言っておかないと」

「そうですね」

 顔をあげて笑いかけると、稀月くんが眦をさげて少し笑い返してくれる。

 そうやって稀月くんと話しているうちに、気持ちがだんだんと落ち着いてきて、ふわっとあくびがこぼれた。