月夜の黒猫は、心を攫う


「そのアミュレットには夜咲くんの想いが込められているものだから、大事にしてあげて」

「もちろんです」

 蓮花さんの目を見て大きくうなずくと、彼女がふふっと笑う。

「夜咲くん、六歳のときに施設から引き取られてしまったあなたのことを、ずっと探していたみたいなの。だから、瑠璃さんを無事にここまで連れてくることができてよかった」

「……施設?」

 そういえば、いろいろなことがありすぎて聞き流してしまったけど、病院の駐車場で戸黒さんも稀月くんが私と同じ施設出身だとか言ってたような……。

「あの……、蓮花さん。もしかして稀月くんは、椎堂家にボディーガードとして雇われる前から私のこと……」

「それは、夜咲くんからゆっくり話を聞かせてもらうといいと思う。早く休んでもらいたかったのに、長居してしまったわね。おやすみなさい」

 蓮花さんは上品に微笑むと、今度こそ、部屋から出て行った。

 ひとりきりになると、なんだか急にどっと疲れが襲ってきた。このままベッドに倒れて眠ってしまいたかったけれど、髪は少し乱れているし、汗もかいている。

 私は部屋の備え付きのシャワールームに入ると、ゆっくりと時間をかけて温かいシャワーを浴びた。

 用意されていたパジャマに着替えて髪を乾かし、歯を磨くと、ベッドに横になる。

 さっきまでは疲れてすぐにでも眠れそうだったのに、シャワーを浴びるとすっきりして目が覚めてしまった。

 一度目が冴えると、今度はなかなか眠れそうにない。

 眠り慣れないベッドのうえで、右を向いたり、左を向いたり何度か寝返りしていると、ふと、稀月くんにもらったブレスレットが目に留まった。

 稀月くん、もう寝ちゃったかな……。

 蓮花さんは、このブレスレットは稀月くんの想いがこもったお守りだと教えてくれたけど……。

 稀月くんは、どんな気持ちでこれを私にくれたんだろう。

 そんなことを考えていると、稀月くんに会いたくてたまらなくなる。