月夜の黒猫は、心を攫う




 蓮花さんに案内されたのは、二階の奥の部屋だった。

「夜咲くんの部屋は、前にいたときに使っていたところを家具はそのままにして掃除をしてある。瑠璃さんは、夜咲くんの隣の部屋ね。私が説明するから、夜咲くんは先に部屋で休んで大丈夫よ」

 蓮花さんはそう言うと、稀月くんはチラリと気にかけるように私を見てから蓮花さんに頭を下げた。

「ありがとうございます、蓮花さん。ではお嬢様、おやすみなさい。何かあったら、いつでもドアをノックしてくださいね」

「おやすみなさい、稀月くん」

 私と稀月くんが互いに挨拶を済ませると、蓮花さんは私がしばらく住むことになる部屋のドアを開けた。

 これまで客室として使っていたという部屋は、椎堂家の自室よりも広い。

 ひとりで使うにはもったいないほどの部屋の広さに驚いていると、蓮花さんがベッドの横に備え付けてあるクローゼットを開けた。

 そこには、女性向けの服がいくつかハンガーにかけられていて、下の空いたスペースには引き出し付きの収納棚が置かれている。

「瑠璃さんに必要なものはだいたい揃えたつもり。このクローゼットや棚の中に入れてあるから、開けて探してみて。なにか足りないもがあればすぐに用意するから、遠慮なく言ってね」

「ありがとうございます……!」

「それから、部屋にはシャワールームがついてるから。シャワールームの横の洗面台の引き出しに、タオルやスキンケア用品、あとはドライヤーも置いてあるから」

「あ、はい……」

「明日の朝もゆっくり寝ていて大丈夫よ。朝食は、瑠璃さんが起きた時間に合わせて作らせるから。じゃあ、ゆっくり休んでね」

「あ、あのっ……」

 ひととおり部屋の説明をしてから、蓮花さんが出て行こうとする。その背中を、私はつい呼び止めた。