月夜の黒猫は、心を攫う


「え、でも……」

 稀月くん達の話だと、使い魔は魔女と同日同時間に生まれるらしい。

 運命の魔女と使い魔だという蓮花さんと大上さんは、見た目的にたぶん二十歳前後。烏丸さんだって、まだ二十代半ばに見えた。

 蓮花さんのお父様と烏丸さんが同い年だとしたら、烏丸さんはほんとうは何歳……? 

 めちゃくちゃ若く見える四十代とかだろうか。

「使い魔と言っても、父は烏丸さんの運命の魔女ではないの。彼の家族と運命の魔女は、ずっと昔に亡くなっているから」

 驚く私に、蓮花さんが説明してくれる。

「蓮花さんは、お父様も魔女なんですか?」

 魔女って女の人だけじゃないのかな。私が首をかしげていると、

「魔女は、表記上は『魔女』って書くけど、性別が限定されてるわけじゃないの。人間の寿命よりも長生きできる特別な《心臓》を持って生まれた人たちは、性別問わずに『魔女』と呼ばれてる。でも、私の家みたいに親子で『魔女』ってパターンはめずらしいかもしれない」

 蓮花さんがまた教えてくれた。

「さあ、今夜のおしゃべりはこのくらいにしましょうか。一度にいろんなことが起きて、瑠璃さんも疲れてるでしょ。夜咲くんと瑠璃さんの部屋を用意してるから、案内するわね」

 蓮花さんがそう言うと、大上さんがドアのほうに進み出てきた。

「あ、じゃあ、おれが案内するよ」

 大上さんがリビングのドアを開けると、蓮花さんが彼のそばに近付いて小さく首を横に振った。

「いいえ、ご案内は私が。拓郎も捜査で疲れてるでしょ。先に部屋で休んでいて」

 大上さんの頬に手をあてた蓮花さんが優しく微笑む。

「ありがと」

 さっきまで、ご主人様と忠犬にしか見えなかったふたりだけど、大上さんを見上げて微笑む蓮花さんとわずかに頬を染めてうつむく大上さんは、ちゃんと恋人同士に見える。しかも、すっごく絵になる美男美女だ。

 ついぼんやり見とれていると、蓮花さんが私たちを振り向いた。

「夜咲くん、瑠璃さん、どうぞこちらへ」

「行きましょうか。お嬢様」 

 稀月くんに促されて、私は蓮花さんのあとを追いかけた。