ふたりのやりとりを見ていると、蓮花さんが私の前に歩み寄ってくる。
「あらためて、はじめまして。宝生 蓮花です。ここに移動してくるまでに、NWIについてや魔女のことは簡単に説明を受けたってことは拓郎から聞いているけど合っている?」
蓮花さんは、見た目もとてもきれいだけれど、話し方や声も凛としていて美しい。
茉莉もそうだけれど、ホンモノのお嬢様。普通にしているだけで、そういう雰囲気が漂ってくる。
「あ、はい……。車の中で、だいたいは。私が魔女だってことやRed WitchやNWIっていう組織のことも」
美人な蓮花さんを前にドキドキしながら頷くと、彼女がふっと優しく微笑んだ。
「突然のことで、びっくりしたでしょう。ほんとうは、瑠璃さんに事前に事情を知らせておければよかったんだけど……。戸黒にちょっとでも疑われないように捜査を進めたかったの。まあ、結果、捕獲に失敗してしまったみたいだけど……」
蓮花さんが肩をすくめて、烏丸さんと大上さんを振り返る。
「ごめんね、蓮花……」
無表情な烏丸さんの横で、大上さんがシュンとなる。
「謝るなら私じゃなくて、あとでお父様にね。あとは、協力してくれた夜咲くんと瑠璃さんにもちゃんとお礼を。それから烏丸さん。時間ができたら例のアプリもチェックしておいたほうがいいと思う。戸黒の捕獲に失敗したあと、彼の率いるカルドの情報がいくつか削除されてた」
「かしこまりました。では、私はこれから本宅のほうに移動します」
「よろしくね」
烏丸さんが、蓮花さんに恭しく頭をさげる。
「夜咲くんと瑠璃さんは今日はゆっくり休んでください。大上、蓮花さんとふたりのこと、しばらく頼む」
「はい、烏丸さん」
烏丸さんは私たちに挨拶をすると、リビングから出ていった。
烏丸さんも使い魔だと聞いているけれど、彼は大上さんとは対照的で冷静で淡々としている。パタンと閉じたリビングのドアを見つめていると、
「烏丸さんは、私の父の使い魔なの」
と、蓮花さんがふふっと笑った。