連れて行かれた宝生家は、私が思っていた以上の豪邸だった。
駐車場は車が三台は余裕で停められそうなくらいな広さだし、駐車場から玄関までの距離は椎堂家よりずっと長い。
会社経営をしている椎堂の家もかなり大きかったけど、宝生家はそれ以上だ。しかも、ここは本宅ではなくて別宅だと聞いている。
別宅で椎堂家よりも大きいんだから、本宅はさらに大きいんだろう。そんなお家のお嬢様って……。
案内をしてくれる烏丸さんについて、豪邸の中に入る。
玄関から長い廊下を歩いてリビングに着くと、蓮花さんが待っていた。
「おかえりなさい。それから、はじめまして。瑠璃さん」
ソファーから立ち上がって私たちを出迎えてくれた蓮花さんが、優雅に微笑む。
実物の蓮花さんは、写真で見るよりもずっと綺麗な人だった。
「ただいま、蓮花! 会いたかったよ〜」
顔を見た瞬間、大上さんが蓮花さんの元へと駆けていく。
緩みきった笑顔で蓮花さんに抱きつく大上さんは、お出かけしていたご主人様を出迎えるときの犬みたいだ。大上さんの後ろに、ぶんぶん揺れてるしっぽが見える気がする。
「そうだね、拓朗。でも、今は瑠璃さん」
蓮花さんが、擦り付いてくる大上さんのことをクールにあしらう。
軽く肩をおされた大上さんは、しょぼんとした顔で蓮花さんから離れて後ろに下がった。
蓮花さんは、大上さんの運命の魔女だって言っていたはず。
だけど、はたから見たふたりの関係は、ご主人様と忠犬って感じだ。