月夜の黒猫は、心を攫う


「もうすぐ宝生家の別宅に着く」

「そういえば、私たちが今向かっている場所って……」

 高速を走って、数時間。少し前に高速を降りて市街地を走っているけれど、茉莉の入院している病院を出てから随分遠くまで着ているような気がする。

「今から向かうのは、おれが施設を出てからお世話になっている宝生さんの家です」

「宝生さん?」

「宝生さんは烏丸さんやイヌガミが所属している、NWIの関係者です。管理がしっかり整っているので、心臓を狙われているかもしれないお嬢様にとっては一番安全な場所です」

 稀月くんが私を見つめて、ふっと目を細める。

 NWIの関係者って言われたら、なんだか緊張するけど……。稀月くんがお世話になってきた人なら、信用していいんだろう。

 私が頷くと、社内でブブーッと誰かのスマホが鳴った。

「あ、蓮花(れんか)からだ」

 鳴ったのは大上さんのスマホだったらしい。

 スマホの画面を見つめながら、大上さんがニヤニヤと嬉しそうにしている。

「蓮花も、瑠璃ちゃんの到着を楽しみに待ってるって」

 メッセージを確認し終えた大上さんが、私を振り向いて笑った。 

「顔、ゆるんでるけど……」

 冷めた目でそう言う稀月くんに、大上さんは気にせずにっこにこの笑顔を見せてくる。

「そりゃ、そうだよ~。だって、半日ぶりに蓮花に会えるんだもん」

「半日……」

「ねえ、蓮花って……?」

 呆れ顔の稀月くんの袖を引っぱってこそっと聞くと、大上さんが前に身を乗り出してきた。