月夜の黒猫は、心を攫う


「お姉ちゃん、はい」

 ぼんやりしていると、茉莉がシュークリームの箱を私のほうに差し出してくる。

「あ、うん……。ありがとう」

 私がシュークリームに手を伸ばすと、茉莉がほっとしたように笑った。

「どうしたの、お姉ちゃん。今日はなんだかうわの空だね」

「そんなことないよ」

「そう? あ、そうだ。茉莉からお姉ちゃんに渡したいものがあるんだった」

 茉莉がそう言って、そそくさと立ち上がる。それから、ベッドサイドの引き出しを開けると、何かを後ろ手に隠しながら私のところに戻ってきた。

「お姉ちゃん、お誕生日おめでとー」

 茉莉が私の前に出してきたのは、私への誕生日プレゼント。パールのついた手作りのヘアゴムだった。

「お姉ちゃん、もう高校生だし、本当はもっと、メイク道具とかアクセサリーとかいいものをあげたほうがいいんかなって思ったんだけど……。ちゃんと心を込めたものをあげたいなと思って、こっそり作ってたんだ。よかったら使ってね」

 照れくさそうに笑う茉莉は、初めて会った日と変わらず可愛い。絵本の中から出てきたお伽話のお姫様みたい。

「ありがとう、茉莉。嬉しい……。大事にするね」

 ヘアゴムを大切に握りしめてお礼を言うと、茉莉がふふっと笑う。

「喜んでもらえてよかった。あれ、お姉ちゃん。そんなブレスレット持ってたっけ?」

 ふと、何気なく視線を下げた茉莉が私の左手首のブレスレットに気が付いた。

「ああ、これは……」

 なんと言おうか、少し迷った。これは、今朝、稀月くんがくれた誕生日プレゼント。

 でも、茉莉からのプレゼントをもらったあとで、正直に話すべきか迷う。

 だって、茉莉はたぶん稀月くんのことが好きなのだ。

 なんとなく右手でブレスレットを隠すようにかばうと、茉莉が怪訝な顔をした。