見惚れる私に、茉莉は言った。
「茉莉、やっぱりお姉ちゃんがほしいな」
それが決め手になって、両親は私を椎堂の家に引き取った。
あのときから、茉莉は私の大切な家族で、可愛い妹で――。ひとりぼっちの世界から救ってくれたお姫様だ。
「お姉ちゃん、稀月くん、座って」
茉莉が私と稀月くんを順番にソファーに座らせて、自分は稀月くんの隣に座る。その距離がやけに近いような気がして、私の胸に複雑な思いが過ぎる。
稀月くんの隣で嬉しそうな茉莉の横顔を無言で見ていると、
「お姉ちゃん、食べないの?」
茉莉が不思議そうに首を傾げた。
茉莉は、ただ純粋に稀月くんが隣にいることを喜んでいるだけ。好きな人がそばにいたら、嬉しくなってしまうのはあたりまえ。
わかっているのに、私はこの頃、ときどき茉莉に嫉妬してしまう。
前は――、稀月くんが来るまではこんな気持ちになったことはなかった。
六歳で椎堂の家に引き取られたときから、立場はきちんとわきまえなければいけないと思ってきた。
椎堂の両親は「ほんとうの娘だと思っている」と言ってくれるし、名門の私立高校に通わせて、セレブな教育を受けさせてくれて、私にはもったいないくらいの生活を送らせてくれている。
今の生活に不満はない。私はとても恵まれている。
だけど……。もし万が一、私が両親や茉莉の機嫌を損ねるようなことがあれば、今の生活はなくなるかもしれない。
両親や茉莉がどんなに優しくしてくれても、心のどこかにそんな想いはずっとある。
それなのに、稀月くんが来てからは……。稀月くんのことが絡むと、私の茉莉に対する気持ちがブレそうになる。
茉莉は、可愛い妹で、私の世界のお姫様なのに。茉莉に対して、モヤモヤした感情を抱いてしまう自分が嫌だ。



