月夜の黒猫は、心を攫う


 生まれたときから身寄りのなかった私が、施設から椎堂の家に引き取られたのは六歳のとき。

 ちょうどその頃、椎堂の両親は、病気がちで外に出られない茉莉の遊び相手になれるような女の子を探していた。

 両親は茉莉の《妹》を探していたみたいだが、茉莉本人は「お姉ちゃんがほしい」と強く望んでいたらしい。

 私がいた施設に椎堂の両親と茉莉がやってきた日、椎堂の両親が会いに来たのは私よりもふたつ年下の別の子だった。

 けれどその日、その子は朝から体調を崩してしまって、椎堂家の両親と面会ができなかった。

 施設にいたときのことは、今はもううっすらとしか覚えていないけれど、私は年齢の割には小柄でおとなしくて、施設の他の子どもたちにうまく馴染めていなかった。

 施設の子たちのなかには、あまり話さず笑わない私に嫌がらせのようなことをしてくる子たちがいて。

 椎堂家の家族が施設を出て帰ろうとしたとき、私は施設の子にわざと押されて、彼らの目の前で転んでしまった。

「大丈夫?」

 そのとき、そばでしゃがんで私に手を差し出してくれたのが茉莉だった。

 淡いピンクのワンピースに白の麦わら帽子。子どもなのに、小さな手を差しのべる所作はとても綺麗で。

 私にふわりと微笑みかけてきた茉莉は、外国のお人形――、というよりも、施設に置いてあった絵本の中から出てきたかわいいお姫様みたいだった。