「稀月くん、部屋の中に入って」
ドアの外に立っている稀月くんに声をかけると、彼が無表情で私を見てきた。
「おれはここで待っています」
「でも……茉莉が稀月くんといっしょにシュークリーム食べたいって。だから、少しだけ」
そんなふうにお願いすると、稀月くんがふっと息を吐いて個室に足を踏み入れた。
基本的に稀月くんは、私以外の人間との交流を持たない。
父との契約なのかどうかはわからないが、稀月くんの他人への無関心さは徹底している。
だけど、そんな稀月くんも茉莉の頼みは無視しない。両親に、茉莉のことも気遣うように言われているのかもしれない。
「稀月くん、こっち」
稀月くんが部屋に入ると、ソファーのテーブルに紅茶のカップを並べていた茉莉が笑顔で彼を手招きした。嬉しそうに頬を染めた茉莉は可愛い。
目鼻立ちのぱっちりした茉莉は、美人な母によく似ている。
そんな茉莉と私は椎堂家の姉と妹だけれど、見た目は全然似ていない。
昔から頻繁に茉莉のお見舞いに来ている私は、病院のスタッフたちともすっかり顔馴染みで、私たちを仲の良い姉妹だと思ってる。
だけど、私と茉莉が姉妹なのは戸籍上だけ。私たちは血が繋がっていない。



