月夜の黒猫は、心を攫う


 朝の情報番組では、十代の女性が殺害された事件が『孤独な魔女の物語』がモチーフになっているのでは……と話題になっていた。

 でも、事件と物語が似ているのは、銀のナイフと心臓を抜き取られたという部分的なところだけな気がする。

 猟奇的に女性を殺害した犯人と、大切な人のために自分の《心臓》を差し出した魔女では、想いも目的も違ったはずだ。

 悲しく美しい物語の余韻から抜け出せないまま、ゆっくりと本を閉じる。

 置いてあった棚に本をしまっていると、ふいに後ろから右肩をつかまれた。

「お嬢様っ……!」

 息を切らした声で呼ばれて、ドキリとする。

 振り向くと、血相を変えた稀月くんが後ろに立っていた。

「教室に迎えに行ってもいないので心配しました。なぜ、こんなところに……」

 GPSを持たされているから、居場所なんてすぐに特定できたはずなのに。それでも稀月くんは、掃除のあとも教室に戻らない私のことを探しにきてくれたらしい。

 私が普段と違う行動をとると、稀月くんは過剰に心配する。

 図書館に寄るなら、稀月くんのスマホにひとことメッセージを入れればよかった。

「ごめんなさい……。ちょっと、読んでみたい本があって……」

 そう言ってうつむくと、稀月くんが私の手元に視線を向けた。