月夜の黒猫は、心を攫う


 最後まで物語を読み終わったあと、私はなんとも言えないせつない気持ちになった。

 ページの途中途中に差し込まれている挿絵は、とても美しくて物悲しい。

 私が特に印象に残ったのは、満月の光を浴びながら、魔女が自分の心臓に銀のナイフを突き付けるラストシーンだ。



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「愛しいあなたのためならば、心臓などすこしも惜しくありません。よろこんで、あなたに捧げましょう」
 満月の夜の森で、魔女は銀の剣を静かに振りあげました。
 月の光で剣はかがやき、魔女が美しく微笑みます。
「これで、いつもあなたのそばにいられます」
 そう言うと、魔女は月の魔力を宿した剣で左胸をひといきに貫いたのでした。

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 お姫様に《心臓》を捧げれば、魔女は死んでしまう。

 それがわかっているのに、満月を見上げて微笑む魔女はとても幸せそうな顔をしている。

 森の中で孤独に生きてきた魔女にとって、お姫様の存在は特別だった。

 自分の命と引き換えにしても、助けたいと思うほどに……。

 そういう存在に出会えた魔女は、きっと最期は幸せだったんだろう。

 それにしても……。

「心臓に病気を抱えたお姫様、か……」

 ラストシーンの挿絵を見つめながら、ボソリとつぶやく。