月夜の黒猫は、心を攫う


 実はお姫様は心臓に病気を抱えていて、長くは生きられない。そのことを、王様もお妃様もとても心配していた。

 森に迷い込んできたお姫様は、魔法の果実を見つけて病気を治してもらいたいと思っていたのだ。

 お姫様は、魔法の果実を探すのを手伝って欲しいと頼み、魔女は協力することになる。

 どこにあるかもあるかわからない魔法の果実を探すうち、魔女とお姫様は仲良くなる。

 けれど、魔女は特別な《心臓》のおかげで、人間よりもゆっくりと歳をとる。

 使い魔の黒猫は、魔女のことを心配して、お姫様と仲良くなりすぎないようにと何度か警告する。けれど魔女は、初めてできた友達に夢中だった。

 あるとき、お姫様が森に遊びに来なくなる。

 心配になって森の外に様子を見に行った魔女は、お姫様の病気が重くなり、今にも死んでしまいそうなことを知る。

 初めての友達を失いたくないと思った魔女は、お姫様に自分の《心臓》をあげたいと思う。

 実は、人間たちのあいだで言い伝えられている魔法の果実は、魔女の《心臓》のことだったのだが、お姫様と友達になりたかった魔女はずっとそのことを秘密にしていた。

 満月の夜、銀のナイフで魔女の《心臓》を取り出せば、それはどんな病も治すことのできる薬になる。

 魔女は使い魔の黒猫が止めるのも聞かず、銀のナイフで胸を貫いてしまう。そして使い魔の黒猫に頼んで、お姫様に《心臓》を届けさせた。

 魔女の《心臓》を得たお姫様の病気は治る。

 元気になったお姫様は喜んで森の魔女に会いに行くが、そこにいたのは、哀しみに泣く一匹の黒猫だけ。

 魔女はもう、この世界のどこにも存在しない――。