「大丈夫ですか?」
茉莉の個室から離れてエレベーターに乗り込むと、稀月くんが寄り添ってきて、私の手をそっと握った。
彼の手をぎゅっと握り返すと、私は下を見ながら小さく頷く。
大丈夫なのか、と聞かれれば、あんまり大丈夫じゃない。
でも、私が大丈夫でも大丈夫じゃなくても、茉莉と会えるのは今日が最後。これは、私が東京行きを許されたときから決まっていたことだった。
二ヶ月前に戸黒さんがNWIに捕まったとき、烏丸さんたちは椎堂の両親のRed Witchとのつながりを詳しく調べた。
もし椎堂の両親がRed Witchと繋がっていた場合、戸黒を捕まえるだけでは解決にならない。椎堂の両親が、他の使い魔を雇って魔女の《心臓》を奪おうとする可能性があるからだ。
取り調べの結果、椎堂の母が戸黒の運命の魔女だということや戸黒と協力して私の《心臓》を奪おうとしていたことはわかったが、椎堂の両親とRed Witchのつながりは認められなかった。
捕まった戸黒さんも、「椎堂の奥様はRed Witchとは何の関係もない。瑠璃さんの《心臓》を奪うことも自分が奥様を唆したのだ」と強く言い張り、結局、私の誘拐と殺害未遂の罪は、戸黒さんのみが引き受けることになった。
烏丸さんの話だと、実際に、椎堂の母は、私から《心臓》を奪っていいものか迷っていたらしい。
実の娘のためとはいえ、一度は家族として引き取った私を犠牲にしてもいいのか、ずっと葛藤があったのだという。



