お見舞いに来て何時間かが過ぎた頃、トントンッとドアがノックされて看護師さんが顔を覗かせた。
しょっちゅう茉莉のお見舞いに来ていた私は、ほとんどの看護師さんと顔見知りになっていたけど、部屋に入ってきたのは私の知らない人だった。
「椎堂さん、あと十分で面会時間が終わりますので」
看護師さんに声をかけられた茉莉が「はーい」と返事する。
「あと、十分だって。お姉ちゃんたち、帰る準備しないとだね。あの看護師さん、最近入ってきたんだけど、かなりルールに厳しいの」
茉莉が苦笑いしながら、ソファーから腰をあげる。
茉莉が紅茶のカップやケーキのお皿を片付け始めたので、私と稀月くんも食器をシンクに持って行って洗い物を手伝う。
茉莉と話しながら片付けを終えると、ちょうど面会終了時間になった。
帰る準備が整うと、茉莉が個室のドアの外まで見送りに出てきてくれる。
「お姉ちゃん、稀月くん、今日はありがとう。次に帰国してきたときも遊びに来てね」
淋しそうに笑う茉莉を前にして、胸が詰まる。
茉莉と別れるのは私もすごく淋しくて、泣きそうになる。
でも、留学でしばらく会えなくなる妹と別れるだけで泣くのはきっと変に思われちゃうから。奥歯を噛み締めて、ぐっと堪えた。
「……またね」
泣かないかわりに、少し小さな茉莉をぎゅっと抱きしめると、茉莉がびっくりしたように肩を揺らした。



