「もしなにかあれば、いつでも連絡してね。瑠璃ちゃん」
稀月くんとの会話を諦めた大上さんが、私に声をかけてくる。
「……ああ、はい」
私が曖昧に笑って頷くと、大上さんと一緒に玄関まで見送りに出てくれた蓮花さんが、ふふっと笑った。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ、拓朗。稀月くんの言うように向こうに行けば烏丸さんがいるし、使い魔避けも最新のものを渡してるんだから。ね、瑠璃さん」
蓮花さんが、私の目を見て、少し意味ありげに微笑みかけてくる。その笑みから察するに、蓮花さんは薄々気付いているのかもしれない。
私の《心臓》にはもう、不思議な力がないことを。
二ヶ月前の満月の夜、戸黒さんに捕まって助けられた私は、稀月くんと身体の関係を結んだ。
その前と後で、何かが大きく変わったということはないし、確かめる術はないけれど、たぶん、私の《心臓》にはもう病を治す力はない。
稀月くんとの関係が変わったことは、蓮花さんには話していないけど、感のいい彼女のことだ。きっと、言わなくてもバレているだろう。
「特別な仕事がないなら、拓朗は私のそばにいてね」
「もちろん、俺が最優先で守るのは蓮花だよ」
蓮花さんの言葉に、大上さんが嬉しそうにデレる。
蓮花さんの肩を抱いて見えないしっぽをふりふりしている大上さん。
稀月くんはそんな大上さんにちょっと呆れた視線を投げると、私の肩を軽く押して外へと促そうとする。
「瑠璃、行こう。電車に遅れる」
「いってきます」
蓮花さんと大上さんにぺこりと頭をさげると、稀月くんと一緒に家を出た。



