月夜の黒猫は、心を攫う


 香坂(こうさか)千穂(ちほ)ちゃんは、子役出身の女優さん。お父さんが俳優でお母さんが歌手、お兄ちゃんも俳優っていう芸能人一家の娘だ。

 毎日ボディーガード付きで学校に来ている私は、クラスメートたちからちょっと敬遠されがちなんだけど……。

 千穂ちゃんは、そんな私にふつうに話しかけてきてくれた唯一のクラスメートだった。

「椎堂さん、あんなイケメンボディーガードについてもらってていいな〜。あたしのマネージャーなんて、もうずーっと、口うるさいハゲ親父だよ」

 笑いながらそう話す千穂ちゃんからは、芸能人なのに少しも気取った感じがなかった。

 実際に、千穂ちゃんは明るくて優しいいい子で。私はすぐに千穂ちゃんと仲良くなった。

 今では、私が心を許せる大好きな親友だ。

「それにしても、お誕生日に誕生石の入ったアクセサリーくれるなんて。イケメンボディーガードくんて、絶対瑠璃のこと好きだよね」

 千穂ちゃんが、私をからかって、ふふっと笑う。

「このプレゼントに、そういう意味はないよ」

「えー、あるでしょ」

「ない、ないっ!」

 もし稀月くんが、私に好意を持ってくれているなら嬉しいけど……。稀月くんは父との契約で私のそばにいるんだけ。

 誕生日のプレゼントに、きっと深い意味なんてない。

 顔を赤くしながら千穂ちゃんの言葉を否定していると、ふと、私たちのそばを通り過ぎて行く女子たちの会話が聞こえてきた。

「そういえばさ、朝のニュース見た? 女の子が殺されて、心臓抜かれてた事件」

「見たよ。外国の魔女の童話をモチーフにしてるんじゃないかって言われてたやつでしょ」

「そうそう。実はさ、その被害にあった子が、うちのお姉ちゃんの高校のときの同級生かもしれないらしくって……」

「それ、マジ? 怖くない?」