月夜の黒猫は、心を攫う


「特別な《心臓》はいらないから、稀月くんに私の心をもらってほしい。私、稀月くんが好きだよ」

 ふわっと微笑むと、踵をあげて背伸びする。

 下からそっと、唇が触れるだけのキスをすると、稀月くんが額に手をあててため息を吐いた。

「ご、めんなさい……。嫌だった?」

 私だけが、一方的で強引だったかもしれない。

 不安になって離れようとすると、稀月くんが私の腰に腕を回す。そのまま、グイッと引き寄せられて、離れかけたふたりの距離が縮まった。

「嫌なわけないでしょう。おれは、子どもの頃からずっと瑠璃のことが好きなんです」

「だったら、稀月くんが私の《心臓》の力を奪ってくれる……?」

 稀月くんの瞳を間近に見つめながら訊ねると、彼が少し切なげに目を細めた。

「むしろ、おれ以外に《心臓》の力を奪わせたら許しませんけど」

 掠れた低い声でささやかれて、胸がきゅっとなる。

 指先ですりっと輪郭をなぞるように頬を撫でられて、私は小さく身体を震わせながら目を閉じた。

 閉じた瞼に、やわらかなものが触れて、また小さく身体が震える。

 私の髪を愛おしそうに撫でながら、稀月くんが頬や唇にキスを落とす。

 触れ合うだけのキスは少しずつ、深くなって、息苦しさと甘い熱に脳みそが蕩けそう。