月夜の黒猫は、心を攫う


「戸黒がなにを言ったのかわからないけど……。ほんとうに全部わかってますか?」

「……わかってる」

 こくりと頷いても、稀月くんはまだ心配そうに私を見ていた。

「瑠璃の気持ちは嬉しいけど……。魔女の《心臓》の力は、一度失ってしまえば戻らないんですよ?」

「わかってるよ。戸黒さんは捕まったけど、私がRed Witchの他の使い魔に狙われる可能性は残っているんでしょう? このままずっと満月の夜に怯え続けなければいけないなら、《心臓》の力はなくてもいい」

「《心臓》が特別な力を失えば、長く生きることもできなくなります」

「特別長く生きられなくなっていいよ。稀月くんがそばにいてくれるなら、私はそれだけでいい」

 ふわっと微笑むと、稀月くんが一瞬目を見開く。それから、頬をぱっと朱に染めた。

「瑠璃……」

 左手の甲で口元を覆った稀月くんの顔は、耳まで赤い。

 いつものクールな稀月くんもかっこよくて好きだけど、たまに見せてくれる素の表情の稀月くんも大好き。

 だから……。