一度触れると、稀月くんは私を離してくれなくて。何度も唇を重ねあううちに、キスの温度や甘さが増していく。

 稀月くんのキスを受け止めながら、無事に彼のところに帰ってくることができてほんとうに良かったと思った。

 私が帰る場所は、これからもずっと稀月くんのそばがいい。

 たとえ、私の特別な《心臓》で誰かを救うことができるのだとしても、この《心臓》は誰にも譲りたくない。

 私は稀月くんが好きだから。心を奪われるなら、稀月くんがいい。

「稀月くんは、魔女の《心臓》の特別な力が永遠じゃないって知ってた?」

 唇の前に手をあててキスを止めると、稀月くんの琥珀色の瞳に問いかける。

 まっすぐじっと見つめると、稀月くんの瞳がわずかに揺れた。

「それは、どういう意味で聞いてますか?」

「全部わかってて、聞いてる」

 私がそう言うと、稀月くんが困惑気味に眉を下げた。

「全部って?」

「全部は全部。戸黒さんに聞いたよ。魔女の《心臓》の力は、誰かと身体の関係を結べばなくなるって。だから、もう満月の夜に怯えなくて済むようにしてほしい」

 結構だいたんなお願いを、せいいっぱいの言葉にして伝えたつもり。だけど私の想いは、稀月くんに伝わっているだろうか。

 ドキドキしながら見つめる私を、稀月くんがいまいち測りかねるかのような目で見てくる。