戸黒さんが捕まったあと、私たちは烏丸さんが手配してくれた車で宝生家に帰った。

 家に着いてすぐに蓮花さんが出迎えてくれたけれど、稀月くんは私の手を握ると、蓮花さんにろくに挨拶もせずに私を二階へと連れていってしまう。

 稀月くんの様子は、前に狼の使い魔に連れ去られそうになったときと同じで。

 きっと、ものすごく心配をかけたんだってことが、わかりすぎるくらいにわかった。

「稀月くん……」

 引きずられるように歩きながら名前を呼んだら、稀月くんが自分の部屋に私を引き込む。それからドアが閉まるなり、稀月くんが、きつく私を抱きしめてきた。

「瑠璃……、無事でよかった……」

 今にも泣きそうな声で名前を呼ばれて、胸がぎゅっと苦しくなる。

「ごめんなさい、稀月くん……。今夜は満月だから、気をつけるようにってあれほど言われてたのに」

 家族のことで呼ばれたからって、ひとりで職員室に行っちゃダメだった。先生が急いでても、稀月くんを待つべきだった。

 稀月くんも烏丸さんも大上さんも、最善を尽くそうとしてくれていたのに。

 戸黒さんに捕まってしまったのは、少し大丈夫だろうと気を抜いてしまった私の過失だ。

 運良く稀月くんが見つけてくれたけど、時間稼ぎに失敗していたら、戸黒さんに心臓を奪われていたかもしれない。