月夜の黒猫は、心を攫う


「だって、使い魔は、自分と同日同時刻に生まれた運命の魔女を守るために存在するんでしょう。お母さんは、戸黒さんの運命の魔女なんですよね?」

 運命の魔女に出会えた使い魔は、魂が尽きるまで魔女から離れない。そういうものなのだと、稀月くんが言っていた。

 私と稀月くんは、お互いに気持ちが通じ合って恋人同士になったけど、そうじゃなくて、別のカタチでお互いのそばにいる魔女と使い魔もいるらしい。

 友人としてだったり、母と戸黒さんのように主人と使用人としてだったり。どんな場合でも、使い魔は自分の魔女を守る。生まれたときから、そういう運命が定められている。

 だから、戸黒さんは、母が結婚して椎堂家に来てからも、ずっと母のそばにいた。

 だけど、椎堂家の娘として生まれてきた茉莉は魔女の血はひいておらず、体も弱かった。

「茉莉が病気を持って生まれてきたとき、もしかしたらお母さんはすごく悔やんだんじゃないですか? 自分の《心臓》に特別な力が残っていたらよかったのにって。だから……」

「さすが、瑠璃さんは想像力が豊かですね。だから私が、Red Witchに入り、奥様に変わって茉莉さんのために魔女の《心臓》を手に入れようとしたんじゃないか、と。瑠璃さんは、そう言いたいんでしょう」

 私の話を遮ってそう言うと、戸黒さんがククッと笑う。

「まあ、半分くらいはそれも正解でしょう。でも、私は奥様のためだけにRed Witchに入ったわけではありません。ただ、興味があったんですよ。Witchの童話にも描かれた、満月の夜の儀式に」

 満月の光の下で、銀色のナイフを振り上げた戸黒さんが、赤い舌でちろりと唇を舐める。