「……、そうですね。少なくとも、私と奥様は、かなり前からあなたの心臓で茉莉さんを救おうと考えていましたよ」
「そう、ですか……」
覚悟はできていたし、わかっていたけれど、やっぱり少し胸が苦しい。
でも、ほんとうのことを知れてよかった。できれば、母には愛されていたかったと思うけれど。
親が血のつながったほんとうの娘を優先させるのは当たり前のことなのだろうとも思う。
「教えていただき、ありがとうございます」
ふっと笑いかけると、戸黒さんが奇妙なものでも見るかのように私を見つめてくる。
「聞きたいことは、それだけですか?」
「そうですね……。あとひとつ聞いてみたいのは……」
私の側に立つ戸黒さんの向こうに、金色の満月が輝く。その光をぼんやりと眺めながら、私は戸黒さんに問いかけた。
「戸黒さんがこうして私の《心臓》を奪おうとするのは、全部お母さんのためですか?」
私の言葉に、戸黒さんの瞳が揺れる。冷たく感情の読めない目をした戸黒さんが動揺するのを見るのは、これが初めてかもしれない。
「どういう意味ですか?」
けれど、私に訊ね返してきた戸黒さんは、声にまで動揺をみせることはしなかった。



