月夜の黒猫は、心を攫う


 ずっと私といっしょにいるのに、稀月くんはいつこんなものを用意してくれたんだろう。

 つけてみてもいいかな……。

 セーターの袖を引っ張って隠せば、先生にもバレないよね。

 私は箱からブレスレット取り出すと、留金にちょっと苦戦しながら左手首につけてみた。

 アクセサリーをプレゼントしてもらうなんて、生まれて初めて。

 ブレスレットのチェーンが肌に触れるのをくすぐったく感じながら眺めていると、

「おはよう、瑠璃」

 千穂(ちほ)ちゃんに声をかけられた。

「めずらしく朝からご機嫌だねえ。どうしたの? あ、それ、もしかして……。瑠璃のイケメンボディーガードくんからのプレゼント?」

 私の手元を指差しながらニヤリとする千穂ちゃんは、なかなかするどい。

「あ、えっと……、これは……」

「やっぱりそうなんだー。今日って、なにかあるんだっけ?」

「なにかって言うか……。私の誕生日……」

「え〜っ! そうだったの? それ、早く教えてよ〜」

 私が小声で答えると、千穂ちゃんが絶叫した。

「あたし、何にもお祝い用意してないよ〜」

「いいの、いいの。そんなの全然……」

「よくなーい。明日、絶対になにかお祝い用意してくるからね。とりあえず、今日は何もないけど、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう」

 ニコッと笑う千穂ちゃんはかわいくて、私はその気持ちだけで充分だ。