私が小学生の頃、参観日や学校行事に来てくれた母は、保護者たちの中でも特に美しくて、人目を惹いた。

「あのひと、誰のママかな」

 同級生たちのそんなウワサ話を、誇らしい気持ちで聞いていた。

 家族で出かけたときも、母の美しさはやっぱり周囲の注目を集めた。

 ほんとうの親がいない私は、裕福で優しい父と美しい母、可愛い妹という理想を描いたような家族の一員になれたことを嬉しく思っていた。

 もちろん、両親の関心のほとんどは、実の娘の茉莉のほうにあったと思う。けれど、両親は私に不自由はさせなかった。

 家族としての楽しかった思い出もある。

 だから、戸黒さんに襲われて、椎堂の両親が最初から私を騙してたかもしれないとわかったときは、結構ショックだった。

 私は家族ができたと思っていたけれど、お父さんやお母さんにとっての私は、家族ではなかったんだろう。

 だって、もしほんとうに家族だと思ってくれていたら、たとえ茉莉のためだったとしても、私の心臓を無理やり奪ったりしない。

 ベッドの上で起き上がろうと体勢を横にしようとすると、

 カシャリ——、

 金属の音がして、手足が拘束されていることに気付く。

 手首と足首のところに付けられた鎖で、ベッドに固定するように拘束されていて、自由に体を動かせない。

 これでは、自力では逃げ出すのはムリだ。