目を覚ますと、知らない部屋のベッドの上に寝かされていた。
固いベッドの横にはサイドボードがひとつ。周りは白い壁で囲まれていて、狭くて殺風景。天井に丸い窓があって、そこから月の光が差し込んでくる。
ちょうど真上に見えるのは、金色の満月だ。
椎堂家の母が私に会いに来たのは昼休みだった。
だとすると、蛇玉の煙を吸ったあと、私はずいぶん眠っていたことになる。
それに、ここはどこなのだろう。
まだ頭が少しぼんやりするけれど、母の背後に隠れて一緒にいたのは戸黒さんだった。
蛇玉の煙のせいで少し記憶が曖昧だけど、戸黒さんは母のことを「運命の魔女」と呼んでいた気がする。
まさか、椎堂家の母も魔女だったの……?
そういえば、戸黒さんは、昔、母の実家で働いていて、父と結婚するときに母についてきて、椎堂家の執事になったと聞いた。
ふたりに椎堂家の主人と執事以上の関係があって、母も魔女や使い魔について知っていたのなら……。六歳のときに私が椎堂家に引き取られたのは、きっと偶然じゃない。
初めから、私の《心臓》を使って茉莉の病気を治すことが目的だったんだろう。