月夜の黒猫は、心を攫う


「ありがとう。稀月くん、私の誕生日知ってたんだね。戸黒さんに聞いた?」

「はい、まあ……」

 稀月くんが、微妙に言葉を濁す。

 戸黒さんに聞いたのか。だとしたら納得。

 戸黒さんは、椎堂家の家族のことをなんでも把握している。

 だけど私は、今まで一度も誕生日の日に戸黒さんからお祝いの言葉を言われたことはない。

 たぶん戸黒さんは、私を椎堂家の家族として正式には認められていないのだ。

 だから、戸黒さんが稀月くんに私の誕生日を教えていたことは意外。

 そして、稀月くんにプレゼントをもらえることはシンプルに嬉しい。

「それでは、また放課後迎えに行きます」

 受け取ったプレゼントの箱を見つめて口元をゆるめていると、稀月くんが小さく頭を下げる。

「うん、また放課後に」

 稀月くんは教室に入った私が席に着くまでを見届けてから、自分の教室へと歩いて行った。

 稀月くんの行ったのを確認してから、私は机の下でもらったプレゼントを開けてみた。

 箱の中から出てきたのは、ゴールドのチェーンのブレスレット。

 チェーンにはランダムに四カ所、小粒のラピスラズリが配置されていて、大人っぽさとかわいさの両方を兼ね備えてるようなデザイン。

 和名を「瑠璃」とも言うラピスラズリは、九月生まれの私の誕生石でもある。

 私のことを考えて選んでくれたんだって思える稀月くんからのプレゼントに、なんだかニヤけてしまいそう。