月夜の黒猫は、心を攫う


「ありがとう。じゃあ、戻ってきたら伝えておいてほしい。妹のことで応接室に呼ばれてるって」

「わかった、伝えとくね」

 私は彼女にもう一度お礼を言うと、担任の先生のところに戻った。

「お待たせしてすみません」

「大丈夫だよ。もうすぐ昼休みが終わる前に急ごう」

 私は担任の先生に案内されて、校長室の隣にある応接室へと向かった。

 今から一ヶ月ぶりに茉莉に会うのかと思うと、ものすごくドキドキする。

 茉莉は、突然連絡が取れなくなった私のことをどう思っているだろう。怒っているかな。

 いや、茉莉だったら……。

『お姉ちゃん、無事でよかった!』

 そう言って、少し目を潤ませながら笑ってくれるような気がする。

 でも、茉莉だったら、私が突然姿を消した理由についても問い詰めてくるだろう。

 私と一緒に稀月くんも消えたんだ。

 稀月くんのことが好きだった茉莉は、彼のことも心配しているだろうし、彼のことも聞きたがるはず。

 私と稀月くんの関係、戸黒さんのこと、椎堂家の両親のこと。何をどこまで説明できるだろう。

 やっぱり、少し待ってでも稀月くんと一緒に来た方がよかったかな。

 いろいろと考えているうちに、応接室についてしまう。

「失礼します」

 心の整理がしっかりとつかないままに、担任の先生がノックをして応接室のドアを開けた。

 この先に、茉莉がいる。

 私は左腕のブレスレットを撫でると、目を閉じて深呼吸した。