月夜の黒猫は、心を攫う


「おかえり、瑠璃」

 席に戻ると、沙耶ちゃんがニヤニヤしながら話しかけてきた。

「瑠璃と彼氏、ほんとうに仲良いよね。特に彼氏のほうが、瑠璃のこと大事で仕方ないって感じ」

 ニヤけ顔の沙耶ちゃんにからかわれて、なんだか顔が熱くなる。

「そ、そんなことないと思うけど」

「そうかなあ。なんか、ふたりは、遠目に見てても、ふつうのカップルより特別って感じがするけど」

「べ、べつに、ふつうだよ」

 沙耶ちゃんに言われて、私は熱くなる顔をパタパタと手のひらであおいだ。

 ふつうにふたりで話してただけなのに。

 沙耶ちゃんから、どんなふうに見えてたんだろうと思うと、恥ずかしいし、照れる。

 もし、私と稀月くんがふつうよりも特別に見えるんだとしたら……。

 それは、私たちが当日同時刻に生まれた魔女と使い魔だからっていうのもあるのかもしれない。

 そんなことを思いながら、私は左手首につけているブレスレットに触れた。そこについたラピスラズリを指先でそっと撫でていると、担任の先生が教室に入ってきた。

 まだ昼休みは十分ほど残っていて、先生が来る時間じゃない。

 それに、五時間目の授業は、担任の担当科目の授業ではなかったはずだ。

「先生〜、時間早いし、教室も間違ってるよ」

 クラスメートのひとりが、笑いながら担任の先生に指摘する。

「わかってるよ。授業で来たわけじゃないから」

 担任の先生は苦笑いでそう返すと、なぜか私のところに歩み寄ってきた。