月夜の黒猫は、心を攫う


「どうかしたの?」

「イヌガミから。戸黒の居場所がわかったって」

「ほんとう?」

「放課後までには確保ができそうだって」

「よかった……」

「でも、まだ安心はできない。戸黒が捕まっても、瑠璃の安全が保障されるわけではないし、この一ヵ月で、瑠璃の情報がRed Witchの他のグループに回ってる可能性もあるから」

「……うん」

 稀月くんはそう言うけど、戸黒さんが捕まりそうだとわかって、私は内心ほっとしていた。

 でも……。

 戸黒さんは、茉莉の病気を治すために、椎堂の両親と協力して私の《心臓》を狙っていたはず。

 私から《心臓》を奪えないまま戸黒さんが捕まったら、茉莉はどうなるんだろう。

 両親は、また別の使い魔を雇って、茉莉のために別の魔女の《心臓》を探すのだろうか。

 考えながら、茉莉がくれたヘアゴムに触れる。

 茉莉、元気かな。私が突然いなくなったことを、心配してるだろうか……。

 最後に茉莉と病院で会ったときのことを思い出していると、稀月くんが私の頭にそっと手をのせた。

「瑠璃?」

 ぼんやり考えこんでいた私の顔を稀月くんがじっと覗き込んでくる。
 
「大丈夫ですよ。満月の夜が明けるまで、おれがそばにいるから」

 稀月くんに優しく微笑みかけられて、心臓がきゅっとなる。

「ありがとう」

 稀月くんが近くにいてくれるから、大丈夫。

 今夜は満月だけど、彼がそばにいる限り、悪いことなんて起きないだろう。

 しばらく稀月くんとふたりで廊下で過ごしたあと、私は教室に戻った。