お昼休み。
沙耶ちゃんと教室でお弁当を食べていると、廊下から視線を感じた。
ふと見ると、廊下の壁にもたれた稀月くんがスマホを触るフリをしながらこっそりと私たちの様子をうかがっていた。
昼休みはまだ始まったばかりだけど、稀月くん、ちゃんとお昼ごはんを食べたのかな。
今日はなるべく私から目を離したくないんだと思うけど、稀月くんは私を守るためなら自分のことを犠牲にしちゃうところがあるから心配だ。
お弁当を食べながら、ちらちら見ていると、沙耶ちゃんが廊下の稀月くんに気が付いた。
「もしかして、今日の昼休みは彼氏と約束あった?」
沙耶ちゃんがニヤリとする。
「ううん、別に。約束とかはしてないよ」
「お弁当食べ終わったら、話しておいでよ。彼氏、前の学校でも、瑠璃にべったりだったんでしょう。愛されてるね~」
沙耶ちゃんは、千穂ちゃんから前の学校での私と稀月くんの様子を少し聞いているらしい。ニヤニヤしながら、私のことをからかってくる。
こんなふうにからかって笑ってくるときの顔が、沙耶ちゃんと千穂ちゃんは一番よく似ている気がする。
ふだんだったら、沙耶ちゃんにからかわれると恥ずかしくなって「行かないよ」って言うんだけど……。
今夜は満月だ。
烏丸さんや大上さんまで学校のそばまでついてきて、NWIの人たちは私なんかのために厳戒態勢。だから私も、ちゃんと稀月くんや烏丸さん達に協力しないといけない。
「ちょっとだけ話してくるね」
お弁当を食べ終えると、私は稀月くんのところへ行った。