「それより、瑠璃は今日はいつも以上に気を付けて」

「うん」

「おれの耳があれば隣のクラスの瑠璃の様子はだいたいわかるけど、授業時間中でも気を抜かないでください。休み時間も、なるべく教室から出ないようにして。昼休みは香坂さんと食べると思うけど、少し離れたところで見てるから」

「……、うん」

 稀月くんは私に対していつも過保護だけど、いつもに増して、今日は稀月くんの過保護度合がすごい。

「それから、これ」

 そう言って、稀月くんが差し出してきたのは、GPS付きのキーホルダー。

 前の学校にいた頃、教室で別れるときに毎日のように稀月くんからもたされていたものだ。

 転校してきてからは、一度も持たされることはなかったけど、今日はそれくらい気をつけてほしいっていうことなんだろう。

「わかった。今日はいつも以上に気をつける」

 GPSキーホルダーを受け取ると、制服のポケットに入れる。

「また、帰りにね」

 教室の前で別れるときに、にこっと笑いかけると、稀月くんはなんだか神妙な顔付きでうなずいた。